札幌文学の最近のブログ記事

2017年2月 4日 (土)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「記憶の沼地」須崎隆志】
 短い章をいくつも重ねて、記憶をたどった想いを述べている。記憶をたどることで、曖昧さの中に意識の流れが拡大し、イメージを広げて、物語化することなく、浮遊して失われがちな心象を浮き彫りにしている。人間精神の幽明な部分の表現として味わいがある。
【「海辺の墓地」石塚邦男】
 自分がどこで誰か、記憶を失った情況で、私は海辺を彷徨い、かつての自分を知るという女性に出会う。これには落ちがあって、死者が幽体となってこの世を彷徨い、自らの墓地に戻っていく。これは幽霊物語という形式をもっていることで、話としてまとまりがある。読後すっきりする。その分、味わいが浅くなるのはやむを得ないかもしれない。
発行所=〒006?034札幌市手稲区稲穂四条四丁目4?18、田中方。札幌文学会。
紹介者=「詩人回廊」北一郎

カテゴリー:札幌文学

2014年9月18日 (木)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「遡上」高橋駘】
 これは、宙次という男の血族の消息を尋ねる巡礼の話であろう。まもなく40に届くという宙次。住まいと仕事が不安定な風来坊のような暮らしをしている。始まりは、腐れ縁で面倒を見てくれている女社長が知らせてくれた母親の死にかかわる電話。
 男はその知らせによって、祖父母、両親、兄弟と血筋をたぐって非日常的な旅をする。自分が双子の兄弟と思っていたら三つ子だったらしいことを知る。東京、札幌、広島。時と場所を早めぐりする文章運び。いかにも小説的な設定である。宙次の行く先々で出会う人間が、細部に工夫を凝らした色合いをもって現れる。強い文章力がなければ構築できない世界を展開する。細部が小説を作るというが、盛り込み過ぎかも。
 しかし、人間の業のようなものを刹那的にとらえる。強い文体がそれを可能にしている。話は、対抗意識とも反感ともいえぬ感情をもつアチャ、弟の朝彦を見つけ出して終わる。そこまで巡礼をした宙次の生活の変化は、面倒を見てくれていた腐れ縁の女社長に見限られたこと。その程度しかない。巡りめぐって「ここから先は、どうやって生きようか」である。不安定な風来坊に変わりはなさそうである。双六の振り出し。テーマは何なのか。それがわからないから、小説で追求したのか。この辺に、文章力による文学の傍流性を感をじる。しかし、これが傍流なら、文学の本流とは、何であるのか。その問題提起を孕む、読み応えのある作品ではある。
発行所=〒006?0034札幌市手稲区稲穂四条四丁目4?18。田中方。
紹介者「詩人回廊」北一郎。

カテゴリー:札幌文学

2014年2月 8日 (土)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「恋鎖」海邦智子】
 主人公の女性の若き時代に、関係のあった男性の恋敵的な女友達がいた。しかし、その女性は主人公の恋人に未練を残しながら、ほかの男と結婚しする。それも二度である。その女性の娘というのが、主人公を頼って、同居する。若いころの男とは別れたもの付き合いはある。するとそのやってきた娘が主人公の昔の彼氏に恋をするーーという、なかなか入り組んだ関係を描く。描くのになかなか大変だが、この辺が面白く上手く艶のある話になっている。これは文学だと思った。
【「孤悲」石塚邦男】
 陰陽師の元祖のような役小角の物語。ずいぶん生真面目な小角像になっていて、読んでびっくり、なるほどこういうイメージもあるのか、と現代人的想像力の発揮の情況がよくわかる。自ら作品中で示した史的資料と反対の人間像の発想をしたのであろう。謹厳実直な日本人像は江戸後期から明治のものであるが、意外な役小角像を書かれる時代の現代性を浮き彫りにしている。
発行所=〒001?0034札幌市北区北三十四条西11丁目4?11?209、札幌文学会

カテゴリー:札幌文学

「札幌文学」79号(札幌市)

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2013年6月20日 (木)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

「北海道同人雑誌懇話会」の動向=「札幌文学」坂本順子氏
 ?「札幌文学」79号・坂本順子氏の編集後記より(抄録)?「北海道同人雑誌懇話会」は今年で4年目。道内の同人雑誌の推薦作品を掲載した「北海道同人雑誌作品選集」は3号まで発刊され書店で売られている。巻末にはこの1年間に発行された同人雑誌が紹介され、最新号の主要目次や懇談会参加同人誌の動向が掲載されている。毎年10月には、「同人雑誌作品選集」の新刊発行記念を兼ねて懇親交流会が開催されている。今年も懇話会として第四集「北海道同人雑誌作品選集」を発刊する見通しとなった。
 (中略)インターネットでの同人雑誌をめぐる活動も活発で、激しい議論も飛び交っている。そのなかには道懇親会への辛口評があり、呼びかけ人の意図とは違う論に異議を感じつつも全国の同人雑誌界活況には後方で拍手している1人である。ともあれ北海道の同人雑誌の活性化をめざすゆるやかな懇話会活動の目的はみのりつつあると言えるのではないか。
発行所=〒001-0034札幌市北区北三十四条西十一丁目、札幌文学会

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「札幌文学」79号(札幌市)

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2013年6月19日 (水)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「春の夕陽」海那智子】
 書き出しの10行ほどを読んで、さらっとした文章だな、と目が止まった。そこで読み進んだのだが、その流麗な文章に惹かれて、最後まで読んでしまった。お互いに、愛を失い、愛をさがしている男女の話。そこはかとない人恋しさをもつ人情を浮き彫りにする。やわらかな肌触りのような文章。筋を語るのは野暮な思いがするので、読んでみてください。古風と言えば古風だが、春男という男の語り口を独立させて、構成の工夫にセンスがある。
「ーー今度はあんたの番よ。
 胸に広がる声なき響きに耳を澄ませ、咲き誇る桜花に沙穂はそっと微笑み返した」
という終章などは、余韻が濃く残って、楽しめた。いいですね。
 本誌の編集後記に「北海道同人雑誌懇話会」について坂本順子氏が、現状を記しているので、まずそれだけを文芸同人誌情報として、そのまま紹介しようとしていたのだが、「春の夕陽」をつい読まされてしまった。
紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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「札幌文学」第77号(札幌)

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2012年4月25日 (水)(*)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「あの呼ぶ声は」須崎隆志】
 出だし高台からみる光景の描写から始まる。しかも動的で、何かの物語の展開を予感させる手法に好感をもって、読み出した。すると、札幌の雑誌なのに、九州の半島が舞台になっている。クマゼミが鳴いている土地柄は確かに南のものである。ん?とますます興味を感じて読み進むと、大変良い作品であった。
 もともと文芸作品として技術を凝らした意欲的な小説なのであった。炭鉱に働いていた父親が、職業病である肺病になって病気と闘っている。子どもの頃に主人公は、近所の同病の炭鉱夫が、それで亡くなったのを知る。主人公は驚きで、無邪気に「大崎さんのおじさんが死んだ!」と父親に告げる。
 あとで、主人公は父親が家族のために「死んでたまるか」という気持ちで頑張っていたのになんという心無いことをしたのか、という自責の念がトラウマとなって主人公を苛む。本人はこれによって父親との関係の変化や、父親が亡くなって母と弟の関係も変質したと思い込む。切ない気持ちがよく伝わってくる。それが肉親からの愛情への飢餓感となり、こだわりから、独りで命がけの遠泳に挑む。傷つきやすい心が、父の心を無視したとなやまさせる。もうひとつ深みが欲しいk気にもさせるが、短編の構造に従っており、それも創造的な制作の意欲が見えているからこそのもの。
発行所=〒001?0034札幌市北区北三十四条西11丁目4?11?209、坂本方。
(紹介者:伊藤昭一「詩人回廊」編集人)

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