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「まくた」31号

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<2011年8月16日(火)付、「文芸同人誌案内」掲示板より転載・投稿者:「クレーン」和田伸一郎>

第5回全国同人雑誌最優秀賞候補作を読む(7)
「親子で鬱病」 平井文子
 この作品は関東同人雑誌評(『文芸思潮40号』)で優秀作としてとりあげた。内容は、タイトルどおりの日常が描かれている。この作品の魅力は、病に苦しむ主人公の半生が描かれているのだが、その文章から湧き上がるしなやかさが、読者に救いを感じさせるところだ。ただし、後半の鬱病に関する啓蒙的な部分が弱点になっている。なぜならこうした解説的な文章は、再読に堪えないからだ。
 以上候補作7編を読んできたわけだが、優れた作品の基準とは、再読、再々読に堪えるかどうかだ。人々に読み継がれるというのはそういうことではないのか。
 毎年マスコミで話題になる芥川賞、直木賞にしても、5年過ぎても読まれ続けている作品は数少ない。作品が墓場にいく時間は、ますます早まっているようだ。そうした中で、同人誌から、読み継がれる作品が誕生することは画期的なことだ。この賞がそれに寄与すればよいとおもう。

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『まくた』269号

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文芸同人誌案内掲示板和田伸一郎氏の書き込みを転載します。


マジワル」 中絵馬

 勤務暦15年以上という国際線の客室乗務員「ナオ」の疲れと不安が、この作品全体を被っている。
 妻子のある「木島」との情事が語られているのだが、それは幻覚にも似た頼りなさがつきまとう。例えば次のように、「ナオのなかで一瞬黄色い空の空想が広がり、黄色い空から出た糸にひかれていくように、木島の腕にもたれかかっていった。」
 その木島に今の仕事が「積み重ねにならない仕事」だとして転職を勧められ、40歳を前にしたナオはますます動揺する。ライターとしての木島の自信にひかれ、「望んでいたのはこれだったと思いながら、ナオもまた自分のやり場のない、どうしようもない思いを、木島の体にひとつずつ刻みつけていく。」しかしそれは、ナオの孤独がどこまでも癒されないものと暗示しているようなものだ。
 かつて華やかだった国際線の客室乗務員という仕事が、年齢を重ねるごとに肉体的にハードなわずらわしい仕事に転化していき、重荷と感じられてくる。その悲哀感が、男との性交渉を通じてよく描出されている。そしてそれは、同年代の都会の独身女性の孤独にまで通じていそうだ。

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