小説と詩と評論の最近のブログ記事

2013年3月12日 (火)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「桜桃」石川友也】
 父親の兄夫婦が亡くなって、その娘の菊江が引き取られてきた。和也より4歳上の小学6年生の従姉である。思春期に入る前の姉弟の楽しい交流が描かれる。そして、菊枝は自分の境遇に押しつぶされそうになり、体調を崩すが、少しばかり臥せっただけで、健気にも、その寂しさから立ち直るまでを和也の視点で描く。素直な筆致で詩情を漂わせて味わいが良い。
【「記憶」大川龍次】
 産みの母親を離縁し、後妻を娶った父親。やがて、私は他人の会社経営者のところに養子の出される。その後の生活の苦労を語る生活記録だが、私小説なのかフィクションなのか人生の一面を大雑把に描く。
発行所=123?0864東京都足立区鹿浜3‐4‐22、(株)のべる企画

カテゴリー:小説と詩と評論

2011年5月16日 (月)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

 本誌には第7回森田雄蔵賞の受賞作が、加奈山径氏の詩・「私小説」(同人誌「ふたり」)と、尾関忠雄「タヒチの幻想」(同人誌「北斗」)に決まったとある。受賞の言葉と選考委員である、岩田光子、石川友也、野辺慎一、陽羅義光、各氏の選評がある。
 森田雄蔵氏(1910?1990)は、「小説と詩と評論」の元発行人で、木々高太郎氏(直木賞作家)が創刊した本誌を20年以上にわたり主宰し、継承した方だそうである。
【「死後述懐」陽羅義光】
 ―私はもう死んでいる―からタイトルどおりに死者になったばかりの男の独白。散文詩的なイメージで表現してある。ジェームスジイスの「ユリシーズ」の意識の流れに似たような手法だが、この方が日本的でわかりやすく面白いかも。
【「一笠一杖―四国冬へんろ日誌」雨宮湘介】
 遍路日誌は多いが、読めば面白い。1月15日のなかに「空」の解説があり、その説明ぶりが、日本での「空」の解釈として読むと興味深い。
【「優しい貴方」畠山拓】
 講演をする男につかず離れずの女性の独白体小説。男を「貴方」と称して、彼の講演先での女性関係を観る。恋愛感情をからめて、謎があり、年齢不詳の不気味な味もあって面白い。
【「雑木林の下で」宮部友子】
 この女性も中年か、人間関係のない観察的な女性から見た幻想的社会風景。
【「究極のギャンブラー」美倉健治】
 ガンブル好きのペンキ職人のギャンブラーへの憧れ、夢を語るが、意外と手堅い話で、これもギャンブラーのひとつの姿か。作者はあまりギャンブルをしないらしく、競馬、競輪、競艇へのイメージぶりがわかって面白い。
【「詩に出会うとき??」石川友也】
 ランボーの評論である。訳はいろいろなのがあるが、ここでは粟津則雄訳。70歳の詩人がランボーに宛てた手紙のスタイルが洒落ている。作者のやわらかな心が伝わってくる。まさに、
見つけたぞ 何を?  永遠!!太陽と海が番ったのを

発行所=123?0864足立区鹿浜3?4?22、のべる出版。

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2010年3月1日 (月)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

 本誌には第6回森田雄蔵賞(陽羅義光主宰)の受賞作が発表されている。藤田愛子「横須賀線」(同人誌「構想」掲載)、畠山拓「幼心の記」(同)が受賞作。賞金は五万円を折半、掲載誌「構想」に一万円授与される。
 備考として「森田雄蔵氏(1910年?1990年)は、「小説と詩と評論」の元発行・編集人。木々高太郎氏(直木賞作家)が創刊したものを20年以上にわたり主宰して現在に承継した人」とある。
【「蛍橋」雨宮湘介】
 幼な馴染みの夏子という女性をめぐる恋情のさや当てと友情を描く抒情的な短編。筋立ては平凡だが、行間に文学的な情感を横溢させているので、人物が短い表現でありながら清澄感ゆたかで、陳腐さから脱しているものがある。文体を吟味してみても、計算でそうしたというよりも、天賦の才能のようなものを感じさせる。エピソードを交えた話しの運びの呼吸もよく、計ったように納まっている。
【「詩に出会うとき―ポー詩集」石川友也】
 ポーの「大鴉」といえば小説で有名だが、詩として全文が掲載している。アルコール依存症の幻覚をそのまま作品にしたような作風だが、あらためて詩を読むと、死の象徴である大鴉のイメージには芸術的な工夫が凝らされていて、効果的なのがわかる。恐怖だけでなく、幻覚的な対象を静かに観察し見守る覚悟というか、徹底した自己観察があるように思った。興味深く読んだ。

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