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 長野県内の同人誌十誌が集って、「信州文芸誌協会」という会を組織している。私は「層」という同人誌を出している長野ペンクラブに所属している。
 先日、同人誌「層」の総会・新年会があり、そこで各同人誌の間で交換している雑誌の内、何冊かを入手してきた。
 まず、そのうちの一冊、飯田方面で出ている「橋」61号から読み始めた。この号は2008年に亡くなった「串原義直追悼号」として2009年10月に発行された。
 詩、川柳、短歌、エッセイ、創作とそれぞれ力作、佳作が揃っている。そして、一般には手に入らない作品を読むことが出来るという楽しみがある。
 特に印象に残った米山恵美子さんの作品に触れておく。

 【短歌】夫と真迎う 19首のうちから 
 海馬痩せアルツハイマーと告げられし夫の胸中如何ばかりなる
 薄れゆく記憶を留めおかむとし語学講座を夫の聴きゑる
 紙の類そこここにある夫の部屋を覗くだけにて立ち入り不能
 文殊菩薩の静かな思惟の表情を見つむれば無の先の明るさ
 四十年の夫婦の絆消しがたくひと日の無事をただ願うのみ
 
 【エッセイ】一脚の椅子
 交通事故で片足を切断してしまった友人との交流を淡々と書いている。末尾の追悼歌を掲出しておく。6首のうち  から。
 交通禍に切断せし友の脚納まりたりし白き骨壷
 「死にたいと思ったこともあったの」と淡々という笑みさへ浮かべ
 樹の下の一脚の椅子ぽつねんと西日を返す座る人なく

 【創作】甘夏柑
 結びの部分を引用しておく。石野から送られてきた甘夏を夫は食べようとしない。
 「日常の生活の中で、ちょっとした諍いがあると、今でも石野のことを思い出す和子であった。思い出して行動にう つすというわけでわはないが、懐かしさを胸にして眠り、夢の中で彼と会うのが唯一の楽しみなのである。プラトニ ックな愛として育てたものは、いつまでも鮮烈な思い出として残るものらしい。
 棚の甘夏柑が一段と輝きを増して見える。」

                     転載・原文は金児至誠堂

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2013年5月

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