木曜日の最近のブログ記事

【「歯車」よこい隆】
広がりと収束が短い作品の中に巧みに盛り込まれているようで、怖いと感じた。世界で起こるニュースが冒頭にぽんと投げ出され、急にミニマムな疾走の感覚の描写。ネグレクトの加害者の内面で終わっている。今どきの風俗が書き込まれているが、生物としてのどうしようもなさを感じた。
【「失せ鴉」十河順一郎】
読み始めて、人間関係がややこしくて判りにくいし、時の前後が掴みにくいと思った。それでも、止められずに読み進んだ。止められなかったのは、登場人物がみんなそれぞれの境遇で何とか生きようともがいている様がきっちりと伝わってきたからだろう。現在を軸に戦後間もない頃を振り返って書かれている。両方の時の雰囲気がきちんとかき分けられていて、語り手である僕と惣一が経てきた時間の重みが色濃く描かれている。読者である自分も長い時間の旅をしてやっとここまで辿り着いたような読後感を持った。

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「木曜日」27号

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 昨日、よこいさんから送っていただいた「木曜日」27号(11月30日発行)、昨夜のうちに長めの二作を除く小説4作を読んだ。
 よこいさんの「墨中遊行」、最後の男との会話の部分、13行が惜しかったような気がする。この13行が別のものであったら、作品の様相が一変していたかもしれない。
 菅原英理子さんの「羽あるもののメッセージ」は、前号の作品「掌の上の恩恵」に感心してデジタル文学館に推薦させていただいたのだったが、この作品も文体に無理が無くて、他者の言葉を読むという一種の呼吸作用が自然に出来、実に心地よい文章で書かれている。題名にあるように、こどもの頃にまで遡って、黄金虫など虫のことなど些細なことが書かれているのだが、場面ごとに印象が深い。楽しみな作者である。
 「或る夏の朝」はタイトル、作者名に大きく場所を取ってもなお見開き二頁だけの掌編だが、ふと内田百?の「旅順入城式」という短編の幻想を思い出させられた。あり得ないはずのものを現前させることができる。これは文学の大事な力のひとつだと思いました。

12/09 追記

 今日の未明に十河順一郎『カプセルタウンからの脱出』を読み始め、そのまま結末まで読んでしまった。
 ショーワ・ヘイセイ時代が1700年あまり前のことと書かれているから、近未来小説というより未来小説、あるいは遠未来小説とでもいうべき世界だ。
 ただし書かれているのはルチファーというひとりの女性をめぐる契約婚の夫、それとは別にルチファーをもてあそぶユーニと、その兄であるジュ?イによって展開される。ことにジューイは粗野な乱暴者で、弟ユー二からルチオファーを奪って自分のものにしてしまい、さらにルチファーの契約婚の相手であるアルヒーをあっさり殺してしまい、ルチファーも薬で眠らせたままで解放しない。犯罪者であり、変質者であり、存在として最悪である。彼の粗暴な言動に接していて、ふとW・フォークナーの粗暴な人物であるポパイのことを思い出してしまった。
 ジューイはガンであることが判明した母を救うため、眠らせたルチファーとロボットR7とともに飛行車に乗ってこの国を脱出、太平洋の地底と水中に都市を建設している島国をめざそうとしている。
 ボリス・ヴィアンやアルフレッド・ジャリに慣れ親しんだせいか、こういう荒唐無稽も嫌いではない。ただし、時代がなぜ昭和・平成から1700年(17世紀後!!)に設定されたのかがいまひとつ解らない。むしろ現代の設定でこの人物たち、このストリーで書いたとしたらどうなったか?そんなことを考えた。
 それから、もう一点、読み始めは弟ユーニが主人公であったはずなのに、いつの間にか転轍機が切り替えられたみたいに兄ジューイが主人公の小説になっていた。このことにちょっと違和感を感じた。
 
                        (「出現」小島)

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「木曜日」No.26

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【「鏡裡炎上」よこい隆】
「俺」、小料理屋のおばさんである「あたし」、美由紀という名の「私」の3者が語り手となり、それぞれの視点で書かれている。「んっ、これは誰だ? ああ、この人か」という調子で読み進んだ。それぞれに文体を変えたらもっと判りやすいと思ったけれど、ここが作者の意図する「鏡」なのかなあ、と文学的に鍛えられていない私は思いました。この作品で驚嘆したのは、次の展開がまったく読めないこと。普通は「この人とこの人はこうなるかなあ」などと、ぼんやり考えながら読み進みます。それがまったく浮かばない。ふと、自分は何を期待して読んでいるんだろうと思いましたが、作品世界に浸りたくて一気に終わりまで読んでしまいました。

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「木曜日」25号

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私のもとに、「けんた」さんからメールにて「木曜日」25号に関するご感想が届きましたので、ご本人の許可を得て、転載します。

皆様のそれぞれ一生懸命に書かれている作品、読ませていただきました。なかで一番好きだったのは、十河順一郎さんの「スコープ」(転載者注・「スリーストーリーズ メタモル」中の一篇)でした。
感嘆しました。凄いです。
屋敷内のうつりかわる不思議な景色が、映像のように浮かびます。鶏の色彩鮮やかさが印象的で、「豊頬長頤」の夫婦の奇妙な整然とした美しさが面白く、スコープに見える世界も、異世界へ読者を誘います。
こういう小説が書けたらいいな?、と思いました。どんなに「書く」ということが楽しくなることでしょう。

没法子さんの小説は、本当は寂しさのきわまりの「厭離穢土」なのですが、シュールな幽霊小説だからよけいに、でしょうが、妙に人間くさく可笑しいものがいっぱいまざっていて、何度かくすくす笑いました。これも、面白かったです。

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