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「氷魚」Vol.04・05

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【「誰もいない部屋」(前編・後編)河邑航】
タニグチ理容店の谷口氏は客との会話でも相手に立ち入らないようにしているし、妻とふたりで「同じコマを使い回すアニメのよう」な暮らしをしています。そこに警察官が訪れ、客の死を告げます。谷口氏は客の名前を聞いても記憶にない。警官は死んだ男性の持ち物の中に理容店の会員証があったことから訪ねたのです。そこから徐々に谷口氏の日常感覚がずれてゆきます。といっても男性の死に関係があるのでもなければ、特別に傍目に見てわかるようなずれ方をするのでもありません。それは谷口氏の内面で起こる、些細なことかもしれません。それでも、ずれの感覚が実感を持って伝わってきます。会員証の使い方や表現も、とても効果的です。大好きなレイモンド・カーヴァーの作品を読んでいるようでした。カーヴァーの新作はもう読むことはできませんが、この作品を読んで久しぶりに平凡と思っている日常の中に潜む揺れの感覚を味わいました。しかも舞台がアメリカではなく、どこの町にでもあるようなタニグチ理容店なのです。

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2013年5月

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