獣神の最近のブログ記事

「獣神」第33号(埼玉県)

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2010年1月3日 (日)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

 本誌の「後書き」によると編集責任者・伊藤雄一郎氏は、08年8月に第8回シニア文学新人賞を受賞。昨年には同人の野田悦基氏が山手一郎のペンネームで時代小説を書き、第12回伊豆文学賞を受賞。同氏の「幸福の選択」(鳥影社)は全国販売され、松本の書店では平積みされたという。同時に「小説新潮」4月号には短編小説が掲載されたという。文学の世界は、読み手よりも書き手の方が多いというほど競争が激しい。それなのに大変なものである。

【「碧水まさる」野田悦基】
 金田昭平さんという友人が内田百?全集と山頭火全集を置いて行って間もなく亡くなってしまう。彼の死と関係者をめぐる話で、浮世の有情無情を感じさせる。人物の描き方が巧く、エピソードの出し入れの手順がなめらかで、面白く興味深く読んだ。

【「銀次郎の日記―年金生活の開始1年2ヵ月と読書」青江由紀夫】
 ちょうど総選挙で自民党から民主党への政権交代の時期の日記。読書と千葉の海の釣り三昧に政治論、作詞したものなどが披露されている。社会的には、こうしたライフスタイルの記録は貴重である。つい最近、鹿島灘の防波堤で釣り人が波にさらわれる事件があったが、あれが出来たのはかなり昔である。出来たばかりの時から釣り人の間では名所となっていた。住金のコンビナートの話題もあるが、自分は流浪の時代に2年近く、泊り込んだり通ったりした。その時代は見放されていた砂漠地帯の鹿島灘に、完成までに20年を要するコンビナートができるというので、全国の建設業者がクレーンを持ちこんで、アメリカ西部の石油開発の時代のような様相を呈していた。当時は、冬場は、嵐になると雪が吹き荒れた。これを読むとあの激動の時代を思い出す。
 昨年、事業仕分けで、話題になった雇用促進事業団の末裔は、全国各地の閉山した炭鉱労働者をここにも再就職させていた。その頃から、そうした仕事の斡旋は必要がなくて労働力は民間で流動化していた。当時から官僚は仕事がないのに税金で食うことを自民党と組んでやってきていたのだ。青江氏は、社会問題についても書いているが、一般人の意識の代表例として読める。
発行所=〒359?0025埼玉県所沢市安松1107?4、伊藤方。
(紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一)

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「獣神」第32号(埼玉県)

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1月16日付「文芸同志会通信」より転載。

同人誌「獣神」第32号(埼玉県)(1)

【小説「花の香り」澤田よし子】
 宏司は、幼い頃に継母であったが、優しくしてくれていた義母にしかられた記憶があって、花の匂いが嫌いになる。そして、子供の時に火遊びをして、それが原因で家が全焼してしまったことを思い起こす。家族は出火の原因をしらないままである。そして民子という女性と結婚する。現在と過去を語る手順が紛らわしいが、生活の様子をあれこれ描いて、一人の男の生活意識を描く。

【エッセイ「津軽の旅」野田悦基】
 作者は18歳の時に、太宰治に傾倒していた。それから50年、太宰の故郷で作品もある「津軽」の旅をする。スポーツウエアに登山靴、リュックというスタイルで、朝8時すぎに伊東駅を出て、午後3時に青森に着く。そして交通不便な小泊にある太宰記念館を訪ねる。
 現在、地域の名家であった太宰家は実質的には途絶え、縁戚が政治家になっていることや、太田治子さんは還暦を迎えていた。
 そのような情報を加えて、大変に魅力のあるエッセイである。語り手としての巧みさが、読者を惹きつける。

【エッセイ「カレンダーガール」剛子・ページ】
 英国には「ウィミンズ・インスティチュート」(WI)ダブリューアイという組織があるという。それは自発的な6800の地域社会組織をもち、20万500人のメンバーがいる。作者は東ケント支部に所属し、その活動ぶりを伝えている。多くが定年退職後の高齢者らしい。そのなかで、メンバーの50代半ばのひとが白血病で亡くなったことから、白血病の調査を始めたが資金がない。そこでメンバーの夫人たちが、ヌード写真を専門家に撮ってもらいカレンダーにした。上品に写したらしい。それが、大反響を呼び大いに売れた、とういう実話が紹介されている。たしか、海外ニュースで日本にも紹介されたエピソードである。
 当然なことながら、英国の風土がよく伝わってくる。昔は、外国人を描いて外国人らしくなく、外国を描いて外国らしくない小説などを、プロ作家でも書いていたが、最近はほとんどそのようなものは見られない。国際化が本物なってきた時代になってきたらしい。

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