樹林の最近のブログ記事

佐武寛さん(文芸誌O・同人)の代理投稿です。

 この小説を読んで、小説書きの上手さを感じたのだが、それが引っかかりながら、モチーフを探りたくなって、読むほどに、ファーブルめいた感じがした。親子の絆の儚さを寓意した展開のようで、幻想世界と現実を溶け込ませている手法に、引っ掛かりを覚えた。何か立体絵本からプリン氏が飛び出だしてくる。動物園というハコモノをこの親子がさまよっている。生き物は数々名前が出るのだが、生きて騒ぐ姿が見られない。この親子は素通りしている。生き物との葛藤があれば面白いし現実感が伝わるのだが、なぜか食べ物に集中している。このあたりの書き方は、普通の親子の姿を写したように見える。動物園の中の遊園地であろうか、ブランコが出てくる。子供・PJの幼さがブランコする姿で描写されている。その後の記述を読んでいると、ロバートとこの子は他界しているようである。その亡霊が地上に降りてきた設定になっている。「空中へと歩くように上昇していく」、「残像のように浮かぶ二人の体の抜け殻と、その向こうに広がる空の青さ」で締めくくっている。そこで気になったのは母親の存在だ。その生死は定かでない。  再び、この小説のモチーフが気になる。何を訴えようとしたのか。生き身の人間と霊との交流を描こうとしたのか。それほど宗教的ではなさそうである。或いは親子愛の実体に迫ろうとしたのか。死に切れずに迷って出てきた親子を浮遊させたのか。それにしても母親が隠されているので情念を感じない。なんだ、夢だったのかで終わるのかもしれない。上手にあっさりとまとめすぎているという感じである。淡白である。

*注 「ロバート・プリン氏の動物園」はデジタル文学館で読めるようになりました。

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2013年5月

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