檣 マストの最近のブログ記事

「マスト」第35号(宇治市)

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2016年5月17日 (火)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

 本号は、相馬康郎先生追悼号である。相馬氏の作品と、夫人の回顧録と生徒たちの偲ぶ言葉に満ちている。
【相馬康郎「深沢七郎という人」(「マスト」13号より再録)】
 深沢一郎のみならず、周辺の人間関係、女性関係などを紹介し、それを作品の生み出したれた動機や手法とからませて、興味深く読ませる。バックナンバーには優れた評論を、生徒の同人誌に載せていたことがわかる。10人の門下生の心のこもった弔文がいかに尊敬されていた師であることを示している。
【眉山葉子「湖の妖精(続編)」】
 エリカという女性の愛の遍歴物語である。アクロバット的なスピード感の文章。いかにも小説らしい小説で、才能的に何かを持っている作者のように思える。やはりこのようなロマン系のものは女性の方が適しているのか。どことなく味わいがあるし、面白い。
発行所=〒宇治市五ケ庄ノ内50?67、吉田方。マストの会。
紹介者・「詩人回廊」北一郎

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「マスト」第34号(尼崎市)

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2015年5月26日 (火)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

 本誌が発行されてから三月も経ってしまっている。遅まきながら、順番に後書きまで全部読み終えた。地下鉄に乗っていたので、読み終えたという達成感のあと、乗り換え駅を乗り越してしまったことが判ったときの落胆と疲労感は、なんとも言えないものがあった。
【「ミセレ―レ 憐れみたまえ」西野小枝子】
 主人公の僕は、失業をしていて、マンション管理の派遣パートタイムをしてた頃の、精神と生活の放浪記である。同居人の彼女がいて、パートで収入を得ているらしく、低収入でも過ごせる余裕があることがわかる。失業の状態を自由な猶予期間と考えている。「ハンナ・アーレント」という映画をみたり、薬物中毒になりかけの若者と知り合ったり、その見聞を記す。話はどこまでも流していけば続く手法。状況説明がわかるので、読みやすく面白い。かつてのビート族のような、現代放浪息子物語の形式。出会った出来ごと人々との交流から、それぞれの生活ぶりを問い尋ねることができる。そのためいくらでも長く書ける。非常に書きやすく、読みやすい手法で、終わりどころのないのが特徴。そうなると、作者センスと世界観が魅力的であることが求められるであろう。その形式のサンプルテキストとして最適のように思う。良し悪しを問われれば、良い方にいれる。
【小説「シンプル イズ ベスト」山脇真紀】
 太極拳の体験から、有段者になるのにどのような苦楽があるかを事細かに記す。この形式は、学校にある作文の、体験したことを手順に記し、終わりは「と、思いました」というパターン。ここでは「そうか、むずかしい太極拳も楽しみながらリラックスしてやっていくことにしようと思えた。」で、ぴったり形式に収まっている。現在読んでいる勝又浩著「私小説千年史」(勉誠出版)によると、日本人の小説のエキスは平安時代から盛んになった日記だそうで、たしかこれは日記小説。面白さはどうかというと、これだけ詳しく太極拳について知ることができれば、面白いことは確かである。
【紀行文「常念岳」大家翆娥】
 常念岳という山にに登った体験記で、形式は山脇さんと同じ。よく記憶したというか、記録したというか。その密度の濃さに驚く。書いていて楽しく充実していたに違いない。読んで面白いかと言えば、面白い。
【「湖の妖精」眉山葉子】
 エリカという、情熱に満ちた女性が、妻子持ちの男性と恋をする。てっきり離婚して結婚してもらえると思っていたのに、男は妻が妊娠したので、結婚できないと言いだした。そこで、愛に命をかけるエリカの波乱がはじまる。エリカの情念と肌合いの熱さを描いて、飽きさせない。面白くて楽しめる小説。大衆小説作家として有望な才気を感じさせる。これだけの情感を活かせる才気があるのだから、ミステリー小説を書いて公募に応じるのも、一つの道かもしれない。時流に合えばの話だが。
【「鈎の陣」松尾靖子】
 女性の境遇で大成金になり、その資金を有効に活かした女傑、日野富子を「私」としてその内面から描こうとしたものらしい。歴史小説である。お金は何時の時代も大事である。富子はうまく使って世の中を変えた、という説もあるが、ここでは反省的な感情が描かれている。
発行所=〒660?0803尼崎長洲本通1‐6‐18‐208、松尾方。「マストの会」
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

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2014年4月 4日 (金)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「カンナの恋・続編」眉山葉子】
 雑誌の名前は忘れても、個性のある書き手は記憶に残るもので、「カンナの恋」という小説は強い印象があって、その続きがあるのか、と思い読んだ。中年女性のカンナの恋心と気分が闊達な筆運びで、表現され退屈させることがない。理屈を超えた心の華やぎで読者を楽しませる。
【「歳月はその輪郭を......」西野小枝子】
 かつて恋人だった男を奪われた主人公の諒子が、策略をもってその男の妻となった奈津と再会する。諒子の恨み心どうしてそうなったかの説明と、その過程がみっちり描かれる。じつは男は奈津と結婚してから間もなく亡くなる。奈津はほかにも同様のことをしていたらしく、今は後悔している。諒子に300万円の慰謝料を払って、その後をボランティアで活動をしているのを諒子は見る。こうあらすじを書くと、なるほどと思うが、作者はなんでもてんこ盛りで、奉仕精神などのテーマ性のある問題意識を複数盛り込むので、読んでいる最中はどうなるのやら見当もつかない思いがした。
【「老いの日々」山脇真紀】
 93歳になるは母親が亡くなるまで、実の娘が介護し大往生を遂げるまでを描く。この作品には短い章ごとに小見出しがついている。中味の伝えたいという気持ちが良く出ている。味わいの深いものになっている。
 私自身、所属の同人誌に寄稿することになり、埋め草で過去の作品を加筆してみたが、どうもただの事務的な文章で文学性がない。ただ、それには現在でも読んでほしい社会的な意見が反映されているので、内容ごとに小見出しを入れることにした。編集者は、経済記事みたいですね、といったが、それで通してもらったばかり。同じ工夫をしているという意味で、この作品が一番印象に残った。
 発行所=〒547?0015大阪市平野区長吉長原西4?7?24、西野方。マストの会。
紹介者「詩人回廊」北一郎。

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2013年4月25日 (木)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「そんなことは百も承知のはずだったけど」西野小枝子】
 律子と千尋は7年間同僚として働いた仲の良い教師仲間であった。千尋より二年早く退職した律子は、その後の女友達としての交際を続ける。旅行をしたり、お互いの娘の話や世相の政治談話など楽しく良い関係が続く。そのなかで千尋が難病の悪質な癌になってしまう。千尋の亡くなるまでの無念さや、律子のかけがえのない友人を失った喪失感が素直に描かれている。てらいのない身辺雑記的な、同人誌ならでは作風の読み物であるが、よくあるエピソードの細部が生きており、作者の気持ちが良く伝わってくる。ただ、これで文芸かというと、生活日誌と文芸との中間小説の感じがする。同人誌には多いパターン。
【「カンナの恋」眉山葉子】
 未亡人となっているカンナという中年女性が、自由さと人恋しさからか、漠然とした欲望を潜在させている。彼女に四人の家庭持ちの女友達と交際があって、お互いに潜在的な欲望を満たす話をし合ったりする。競争意識にも駆られて、カンナは粋な男性と交際を深めていくのだが......。女性のエロスへの欲求を軸に、小説となる場面や心理を描くのが巧みで、読者を惹きつける勧どころを心得ている。天性のストーリーテラーの才気を備えているように思えた。どんな作者であろうと、興味が湧いてあとがきを読むと、周囲の意見を取り入れ三年かけたという。そうなのかと思ったが、周囲の意見を素直に取り入れられ、自己流に難なく消化するのは、本来の創作に対する喜びをもっているからで、やはりそれは才能というべきであろう。職業作家なら当然のことであるが...。ラストは唐突に終わっているように読めるが、それを作者が気にしていないというのが良い。小説の構造上、3分の2が読みどころで、終わりのパターンは限られたものに決まっているからである。
 発行所=〒619?1127木津川市南加茂台14?8?1、大家方。マストの会。
紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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