2015年10月アーカイブ

「季刊遠近」58号(川崎市)

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2015年10月26日 (月)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

 特集「私小説千年史」がある。勝又浩氏の「梶井基次郎まで」は、読み応えがある。日本語における曖昧さのなかでの、含蓄に満ちた表現の可能性をもつ日本語の特性を、短いなかで明瞭に提示。わかりやすく説く。後半での梶井の「冬の蠅」や「闇の絵巻」における主客一体の文章については、文学的であるということは、どういうことかについて、強い示唆を感じさせられた。しまりのない文章を当然のように受け入れている自分に、鞭を入れられたような感じがする。
【「不協和音」難波田節子】
 社内結婚で、社宅生活をする美樹。子供ができ普通の生活をしている。高校時代の同級生の女友達の紅子は美大に進学、画家になっている。もうひとりの友人奈緒美は、大学の英文科に進み現在も商事会社に勤めている。美樹は家が貧しかったので高卒で就職し、主婦生活を送る。
 それぞれの人生の在り方を、美樹は比較してしまう。当初は、友人の生活ぶりに劣等感をもっていたが、子どもができると、自分の生活に自信をもってきている。描写の多くを画家の紅子が個展を開催した会場の雰囲気に費やす。それに出席した美樹には、アーチストとして華やかな社交の世界に入り、生き生きとしているように見える。それを読みどころとした作品か。読みようによっては、普通の生活者の美樹から見た、個性を発揮するアーチスト紅子への羨望とも、あるいは充実したように見えても、実際は紅子の社交界での軽薄で虚しい世界のようにも受け取れる。
 美樹の普通の家庭人であることの重みを理解しないであろう、友人たちの感覚との違和感を描いたのであろう。平凡生活の満足感。読者も納得するでしょう。ただ、リアリズム中心主義で、作者の気配りの良さがわかるが、小説的なロマン、作り話の面白さに欠ける気がした。読みどころの個展会場での描写も、過去においてはともかく、現代ではそれほど粒だっていない気がする。
【「母の記憶」浅利勝照】
 生れてはきたものの、母親からは歓迎されず、他人に預けられて育った男。すでに父親でない男と家庭をもった母親に、成人してから一度だけ会いに行った思い出を語る。小説として、ぎぐしゃくしたところもあるが、その辛くて複雑な情念は伝わってくる。
【「優しさが傷」花島真樹子】
 夫は優しいのであるが、妻や家庭と同等に自分の係累にも優しい。結果的にそれが、妻には優しいということになるのか、というジレンマを描く。外でいい人は、そのために家人には悪い人になってしまうことが多い。もすこし小説的なアクセントが強ければいいのにと思わせる。世間でよくある面白い題材だった。
発行所=〒215?0003川崎市麻生区高石5?3?3、永井方。
紹介者=「詩人回廊」北 一郎。

カテゴリー:季刊・遠近

「星座盤」9号(岡山市)

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2015年10月19日 (月)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「ポテトサラダ」三上弥栄】
 身辺雑記とは、異なる視点での生活感のある小説。「私」のどちらというと庶民的生活環境がきちんと描かれ、家族関係、金銭上の具体的なところを明らかにしている。両親に「努力もなく降ってきたものを当たり前として受け取ることなんて、お金はある方が出せばよいなんて、絶対ダメと厳しく厳しくいわれつづけた。」その私の価値観と現状との葛藤。すべて自己責任で生活せざる得ないでいることへの、もやもやとした不満。かといって確信を持った生活信条になるほど、自己確立できていない自分に対する苛立ち。そこに周囲の空気を読みながら、自分の生活の不都合があると周囲のせいにする梢さん。そこに自信をもった生活できていない自分の影をみてしまい、身勝手な梢さんに切れてしまうのである。軽妙な筆さばきの部分では、苦笑させられてしまう。自分の決断すべきことを他人に、ゆだねる人っているよね。書き方次第では、もっとパンチがきかせられそうであるが、それなりに面白い。
【「金魚島」濱本愛美】
 婚約者の都合で、結婚式を延期させられる。準備した結婚式の予約や参席者の準備がすべて無駄になり、失意の若い女性が一時的に故郷の金魚島に帰る。祖母の住んでいた家がまだ残っている。都会生活とはまったく異なる生活環境が、懐かしいような感覚で表現されている。良質な自己表現的作品。
【「きぬぎぬの」水無月うらら】
 長い小説で、読み終わるまで時間がかかってしまった。どんな作品かといわれても、一言でいいあらわせない。真夢という女性が飼っていた「くしろ」という猫が、普通の人間に姿を変える。まだ若いらしい。それが再び猫にもどったり人間になったりする。超常現象であるが、そのことについては、当然のごとくうけ入れられて、出来事が語られる。理屈を超えた猫は、その不思議さの割には、理屈をいったりする。
 読むほどに、作者の幻想的な世界観のなかを歩かせられるのだが、万華鏡のレンズを覗いてミニチュアの舞台を眺めるように、作者の感性を観賞できる。リアルな存在感や切実間を回避して、感性を抽象化する手法かも。文章が巧いというか、読むのを続けさせる表現力が強みであるが、趣味といえば趣味の世界の文学である。読みかけの途中で、同じ作者の前号での「きみから見える世界」が「三田文学」122号の評で、雑誌「文学界」の同人雑誌推薦作になったことを知った。やはり表現技術に優れているのであろう。
発行所=701?1464岡山市北区下足守1899?6、横田代表。
紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

「日曜作家」12号

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「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/に訂正が掲載されましたので、転載いたします。

大原正義作品を「酩酊船」を伊藤が「酊船」と誤記しましたので、お詫びして訂正します。

カテゴリー:日曜作家

「日曜作家」12号=外狩雅巳

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2015年10月17日 (土)(*)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

☆「日曜作家」(大阪府茨木市上野町21番9号 大原正義)日曜作家編集部
次いで「日曜作家」。ISSN番号取得が表紙でわかる。規約も日曜作家賞規定も掲載されている。
季刊なので三年間でここまで発展している。大原代表の気負いが具現されていて素晴らしい。
掲載名簿は会員15名・賛助会員32名だが同封書簡には10月11日現在は会員16名となっている。
日々躍進する気鋭の文芸グループである。内容も従来と遜色が無いと書簡で自認している。
編集後記では情勢に触れその中で文学には何が出来るかと戦意高揚作品等を挙げ書き連ねている。
巻頭には創刊の辞を再録し職に就かず文作一途の知人の個人誌の名称を引き継ぐ事が明かされる。
大原正義「酊船」は30枚の歴史小説。遣唐使についての阿倍仲麻呂秘話的な語り調作品。
大和調停内での藤原氏勃興と阿部氏零落の内紛話が基調で大陸との関連も視野に書かれている。

カテゴリー:日曜作家

「メタセコイア」12号

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2015年10月17日 (土)(*)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

☆「メタセコイア」(大阪市東住吉区南田辺2?5?1 多田正明)・メタセコイア同人会
 先ず「メタセコイア」。大阪文学学校の岡チューターの元に生徒が集まり作り上げたという事です。
編集後記が面白い。ここに十枚と言ったのがここ、二十枚と聞いたとの問答が挙げられている。
日本語・句読点の問題に立ち入り最後に若い人のメールにも句読点が無いと結んでいる。
昨年の11号は【三田文学】と【文芸同志会通信】が作品評を出したと全文紹介している。
128頁だが美装重厚な見栄えは手に取りたくなる。頒価千円も気負いが見えて好感を持った。

カテゴリー:メタセコイア

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