2015年2月アーカイブ

「仙台文学」85号(仙台市)

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2015年2月17日 (火))付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

 本誌の同人である宇津志勇三氏の小説「天明の飢饉の後で」が第51回宮城芸術祭で、宮城県知事賞を受賞したとある。作者は四谷用水に詳しく、祖先もその事業に参画していたという。その史実を精査しているという。きっと郷土の資産になるのであろう。自分もかつては、観光地などでは、できるだけ地元の郷土史家の自費出版ものを買い求めていたものだ。
【「翻案 秋色柳落葉―賀美郡柳沢心中事件―」牛島冨美二】
 戦国時代に討ち死にしてしまった武家が、その恨みをもって後世の子孫、金太郎の夢に出て、討ち死の場所を探し出して供養をせよという。そういう昔ばなしがあるらしい。それを翻案してわかりやすく小説にしたようだ。そんな話があるのかと、面白く読んだ。これも郷土の文化資産である。作者は、同時に詩「鶍(いすか)幻想」や評論「谷崎潤一郎短歌一首の謎」、「宮本百合子短歌二首の謎」など多彩な執筆をしており、観賞力の高さや才気ある筆勢が印象に残る。
【「古寺巡礼」「自註鹿鳴集」石川繁】
 和辻哲郎「古寺巡礼」について、和辻が家に残した妻への思慕を抱きながら古寺巡礼の取材をしていたことを明らかにしている。
 また、会津八一が「自註鹿鳴集」を著していて、その和歌のひらがな分かち書きであるこことなど、知らなかったので勉強になった。
発行所=981?3102仙台市泉区向陽台4?3?20、牛島方。仙台文学の会
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一

カテゴリー:仙台文学

「北狄」第369号(青森市)

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2015年2月15日 (日)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「解けなかった絆」小野允雄】
 河野祐子と永田和宏という歌人夫婦の解説。短歌はやらないのだが、冒頭にこの句がある。

 手を述べてあなたとあなたに触れたきに息がたりないこの世の息が   河野裕子

 このようなものを読むと、小説の通俗性のなかで、短さのなかの情念表現において、これに勝てない。小説として何をどう書くべきか、考えさせられる。
【「鎌先温泉」笹田隆志】
 主人公の杉本は大学の教授か学者であるようだ。躁鬱症状に悩まされながら、同期会に参加した経緯が語られる。過去の記憶をランダムに思いつくままに書いていく。同期会の話も思い出が多く、実際にタイトルの鎌先温泉での同期会の部分は短い。そのなかで、関根という人物が、自律神経失調症になりながら、病をおして同期会だけは出席する意志を示すところが、強い印象があり、いわゆる小説的になっている。散文的小説という形式に読めた。
【「饒舌の時」秋村健二】
 ぼくと同じ村に生まれた信吉という四つ下の男の人生を語る。語り手を主人公と別に設定して、人の運命を追うというスタイルは考えのあってのことであろう。そこは注意をひいた。地味な話を地味な方法で語るので、独特な雰囲気が出ている。

 その他の作品に共通して言えることだが、原稿枚数的には、短いものでも、書き方がゆっくりしているので、読むのに時間がかかる。文章技術的には、もっとてきぱきとした方が良いのであろうが、本誌の場合は、そうしたのでは抜け落ちてしまうものがあるのだと感じさせる。それは作者の感じている存在時間の長さである。緩慢な書き方でないと、その人の存在した時間の色合いが表現できない。それは書き手自身のなかにある表現欲であるということを感じた。それが同人雑誌作品らしさであるようだ。
 発行所=〒038-0021青森市安田近野435?16、木村方。
紹介者=「詩人回廊」北 一郎

カテゴリー:北狄

「みなせ」第65号(秦野市)

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2015年2月 2日 (月)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

 十人程のグループの本誌だが、毎号二百ぺージ前後の充実した内容である。
【「御荷鉾山のつむじ風・神サマ常次郎(三)」小柏正弘(146枚)】
 明治初期の秩父今民党事件首脳陣の一人を子孫が調査した作品である。四百枚以上に渡りドキュメント風な描写を交えての一部始終記である。今回は一族の系譜や親族ならではの資料等も並べた迫力で読ませられた。事実の重さを感じながら作者の内面をも想像されられた力作である。
【「オブジェクション145・冷や水編」岡森利幸(62枚)】
 最近の新聞記事を紹介し意見を添えてゆく方法は一種のニュース解説である。コンビニ店長を土下座させる方法・退位しなかった昭和天皇など八件に及ぶ。ランダムなのか恣意的なのか独特の選出内容が著者の興味や手法を覗わせる。145回も続くこの同人誌の最長連載であり著者の根気にも感銘を受ける。
 このほかに連載小説や随筆・短歌・俳句など広く掲載し季刊で発行を続ける活発な文芸同人会である。秦野市を拠点に各地の仲間が参加して勢いを感じさせる。
 運営の在り方にも注目している。原稿用紙一枚を250円の費用で印刷製本しているという。
 二百八頁の今回は七万円程度である。電子文書の費用だが手書き原稿も百円増である。
 事務局の岡森氏の手腕だろう。会運営にかかりっきりの日常に感服した。年会費も千円と言う廉価で事務連絡等一切を行い残余を発行補助費にしている。3月1日に会合があるというで、出席して内実をつぶさに見聞してくる予定である。高齢化する文芸同人会の運営は担当者の手腕に負うところが多大であろう。
紹介者=外狩雅巳(参照:外狩雅巳のひろば)

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