2014年6月アーカイブ

2014年6月28日 (土)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

  本誌は文章教室から始まり、84年から30年続く会。当時の師である評論家の清水信が同人誌の歴史や情報を「中部誌史」として連載中です。現在会員12名。内男性は二名。百頁強で二回発行。月例合評会を名古屋で行っているそうです。
【「生きるということ」西垣みゆき】
  高花華の営むプディックに来た客である小学校同級生だった河井治子との回顧談で、53才の主人公が小学三年の時に治子に唆されたキャラメル盗難の思い出を巡る会話です。
  心の傷として構えて持ち出す主人公に対して大袈裟だと反論する治子の生き様が重い。「あなたは一度の罪に怯えていたけど、私は華ちゃんの何倍も罪を重ねて来たわ。」と治子が語る盗みをも厭わない過去の日々。その上で得た生き甲斐を聞かされる主人公。
  ―本当の気持ちは私にしか分からない。寂しさも生き甲斐も、個人のものーと書き、―自分で解決していく他はないーと続ける。過去の盗難事件を二人だけの秘密にする。
  30数枚の作品だが大詰めの終盤で纏め上げている。読み終わらせる工夫が巧みである。 
 発行所=〒510-1242 三重県三重郡菰野町大羽根園柴垣町13-8、西垣方。
紹介者「詩人回廊」外狩雅巳

2014年6月25日 (水)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

 本誌は発行者が大阪文学学校の講師、(社)大阪文学協会代表の高畠寛氏で、同人メンバーも充実している感じがする。その中で印象の強かったものを紹介する。
【「萬壱さんと語るー全国同人誌フェスティバルの夜」高原あふち】
 同人雑誌のフェスタが三好市であって、その日の夜に、芥川賞作家の吉村萬壱氏が姿を見せ、意見を交わす。プロ作家との交流の要点を軽快な筆致で楽しそうに報告する。純粋な心模様が文章に良い雰囲気を醸し出している。
【「叫ぶ猫は夜を叫ぶ」赤井晋一】
 連れ添った姉さん女房に別れをつげられ気落ちしていた15年前に、酒場でノラ猫を駆除して抹殺する男の話を聞き、それが独白体の語りになっている。その間接的な表現法と主人公の年上の妻からの別れる際の情況が重ねて語られる。猫ハンターという変わった素材と、突然別れ話を持ち出す妻。どちらもこの世の不条理の姿を仄めかす。現代社会のじっとりと重い部分を軽快に表現する文章。文学的な味わいを感じることができる。
発行所=〒545?0016大阪市阿倍野区丸山通2?4?10?203、高畠方。
「詩人回廊」北一郎

「四国作家」46号(丸亀市)

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2014年6月21日 (土)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

 本誌は同人31人でその半数は高松市です。小説四編を中心に130頁からなっています。
【大森捷二「讃岐那賀群の刀良の帰国」】
  讃岐の古代史断片を万葉集や日本書紀を調べて書いた評論です。柿本人麻呂の長歌を紹介しながら当時の人々に迫っている。幾つかの歌を引用して中国・唐の文化と日本人論になっています。朝鮮半島の覇権を巡る白村江の戦い、大和軍捕虜の帰国談で、なかに記紀等の記録や和歌を縦横に引用し著者の歌論が展開されています。
  同時に万葉人等の当時の日本文化の洗礼度や人情も書き込まれています。大森さんは事務局を担当する心労を私信に書き添えています。しかし作品には彼の心意気が感じられ声援を送りたくなりました。白村江の戦いが日本古代東北地方に及ぼした影響は、僕の作品「北の大地の記憶」と題した小説でも背景にしていますが、二百枚程で中断しています。東アジア覇権戦争に敗れ東北征服に邁進する時代に興味津々です。大森さんに励まされました。
発行所=〒763-0081丸亀市土器町西5?370、大森方。
紹介者=「詩人回廊」外狩雅巳

「岩漿」22号(伊東市)

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2014年6月 6日 (金)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【論文ニーチェ要約「能動的ニヒリズム」財津公江】
 著者は55歳で、慶応大学の哲学科の通信制に入学し、学んだものを卒論にしたものだという。学問というものは、人生経験を積んでから学ぶと、これほどまでに、問題を手元に引きつけて考察できるものかと、感銘を深くした。ニヒリズムの解釈に深さがある。北一郎が評論を書く場合は、参考引用させてもらいたいと思うほど、よく解説されている。
【「冨有柿」椎葉乙虫】
 前号でかなり長いミステリーを読んで(たしか日銀の桜通りでの事件だった気がする)、考えているうちに紹介記事を書くのを忘れてしまった。ミステリーは殺人があって犯人を探すとしても、読者に「誰が殺されようといいや」という気持ちにさせては、読まれない。
 トリックの解明も大事だが、それよりも、探偵役のキャラクターと文章表現に工夫が不可欠である。その表現技術を磨いて高めた末に、純文学にまで上り詰めた作家は多い。ハードボイルドのダシル・ハメットの文体はヘミングウエイに影響を与えたとされ、村上春樹はチャンドラーに学んだ痕跡がある。
 もともと、ミステリーは当初はともかく、文芸を楽しむ英国人の優雅な精神から流行したもので、日本でも江戸川乱歩は、谷崎潤一郎なみ、松本清張は菊池寛なみなど、基本は文章技術の錬磨したからできた作品が多い。現代文学の行き詰まりを突破するという精神で、新しい文体への挑戦を期待したい。
 本作品にもそのような兆しが見えるものの、いかんせん作者がそれに無意識なのが惜しい。
〒414―0031伊東市湯田町7‐12、リバーサイドヒグチ306、木内方、 岩礁文学会。
 紹介者「詩人回廊」北一郎。

カテゴリー:岩漿

2014年6月 5日 (木)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「再び霊鷲山に佇つ」須貝光男】
 副題「妻と二人の霊鷲山」とある。80歳にして、インドの釈尊の布教活動をたどる話。ブッダの遺跡をめぐりその現在を伝える。読み手の自分は、いわゆる唯物論系の思想の持ち主である。座禅を体験している。仏教が唯物思想と全く対立することがないのを感じている。この現地レポートでは、遺跡でサルに噛まれて治療を受けたり、異国の民衆に出会い、そのなかでブッダの思想をたどる、面白いということはないが、如是我聞ではじまる経文を読誦した経験から興味は尽きない。なかなか貴重な記録である。
【「維新前夜・江戸城」石塚邦男】
 本来ならば、明治維新は革命であり、体制側と反対体制側が戦火を交え江戸の街は炎上壊滅したいたかもしれない。なぜ、そうならなかったのか。そのような問題意識から出たものではないらしい。君主や志士の活動ぶりを良く調べ、物語にしている。資料や人物の紹介もある(勝海舟がないが)。文明開化の歴史の副読本にむいている。ただし、このようなスタイルであるなら、文体を「ですます」」調にした方が自然に文章のほうから立ち位置を決めてくれるものであろう。
【「壊す人」清水俊司】
 森の壊す人の幻想的なお話。「ですます」調の効果的雰囲気で楽しく読める。
〒001―0911札幌市北区新琴似11条7‐2?8、コブタン文学会。
紹介者「詩人回廊」北一郎

カテゴリー:コブタン

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