2014年2月アーカイブ

2014年2月17日 (月)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

 本誌は「文学市場」というグループが発行している。会則に、「当会は文芸、文学を楽しむ会です」とある。さらに補足として、「原則として締切日までに投稿された作品は運営委員の判断において、書き直し、または不掲載の場合もあります」とある。
【「小説教室」坂本良介】
 ――ドアを開ける。あけたものの、開けたドアがなぜドアなのかわからない。――とはじまり、入る空間がないのに、逆名(さかな)もも子さんが、小説教室としてやってくる。そのことで、小説教室が存在する。逆名さんは、大学生時代に先生に随筆を書くように言われ、書いたら小説ですね、といわれたという。――これは文章表現に関する散文であり、小説論でもある。表現に用いられる言葉そのものが、すでに誰かによって使用されたものであり、自分のだけのものではない。それをもって書いた小説がどのように独創性や独立性、自立性が証明できるののか、創造性への疑問を含んだ話になっている。ポストモダン時代における純文学小説の困難性を示した哲学的小説に読める。
【「映画日記35」S K】
 これだけ多彩な映画鑑賞ができるのは特殊立場にあるのであろう。実に有益で勉強になる。「批評の対象は、映画だけではない。受けて自身も批評されているのである」と記しているが、それは映画だけに限らない。「読書雑記」「エセー13」も頭の体操になる。小説「おいしい教室」まで書くとなると、奇妙な味の作家である。
【「鵤(いるか)党奇談―一番勝負」新開拓巳】
 自在な筆遣いで、楽しませる時代小説。
【「元旦に囲んだファミリー」宮島研】
 家族麻雀の楽しい想い出だが、書き出しに工夫があって、散文として楽しめる。 
 発行所=〒111?0055東京都台東区三筋1?4?1?703、坂本方、文学市場。
紹介者{詩人回廊}編集人・伊藤昭一。

2014年2月11日 (火)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「ある男の軌跡」牧草泉】
 無職でいた男がひょんなことから、町で若い女と知り合い同居する。女は男が働かないことを気にせず、競馬場通いをするためのお小遣いまでくれて過ごさせる。しかし、男がその生活に飽いて、仕事を探し、職に就く。すると、女は彼のとろから去ってどこかに行ってしまう。その後、また偶然にその女と出うことになる。ここでの内容の芯が、人間存在における支配欲なので、男も女もKという競馬場の男も固有名詞を使用しない。目的に沿った手法で、文学的センスの良さが光る納得のいくスタイルである。
【「船底」高岡啓次郎】
 造船工という職種があるのかどうか知らないが、その労働現場の様子が詳しく描かれている。労働者文学の一種で、かつての平和に対する理想主義が色あせ、共に仕事をした経営者たちも年老いて、亡くなってゆく。造船業界を描いて、滅びゆくことの無常感を感じさせる。高岡氏は雑誌「文芸思潮」で「凍裂」というドラマチックな小説で特別賞を受賞している。自分は授賞式を見学させてもらった。70歳を過ぎて、書くことにはまた特別な決意と想いがあるようだ。
【「渓流の眠りのなかへ」有森信二】
 自分と同じ双子のような、しかし会ったことがない男と街中で出会う。このような設定だと二重人格をテーマにするいものが多いが、ここでは自己存在の不定感、不可解さを感じるような物語になっている。組織のなかの歯車化されている状況に対し、幽体離脱などの現象表現を用いて、抵抗姿勢を感じさせる物語であった。風変わりな作風で、意欲を感じさせるが、二重人物という設定は、エドガー・アラン・ポーをてはじめにドストエフスキーほか多くの作品があり、現代にそれを使って作品化するには、よほどの工夫が必要に思うが、それなりに新味が出ているように感じたが、何となく物足りなさもある。もっと長くしてつなぎを充実させれば雑誌「群像」の賞の選者が好みそうな作風になるかも知れない。
〒818?0101太宰府観世音寺1―15?33、松本方。
紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一

カテゴリー:海(第二期)

2014年2月 8日 (土)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「恋鎖」海邦智子】
 主人公の女性の若き時代に、関係のあった男性の恋敵的な女友達がいた。しかし、その女性は主人公の恋人に未練を残しながら、ほかの男と結婚しする。それも二度である。その女性の娘というのが、主人公を頼って、同居する。若いころの男とは別れたもの付き合いはある。するとそのやってきた娘が主人公の昔の彼氏に恋をするーーという、なかなか入り組んだ関係を描く。描くのになかなか大変だが、この辺が面白く上手く艶のある話になっている。これは文学だと思った。
【「孤悲」石塚邦男】
 陰陽師の元祖のような役小角の物語。ずいぶん生真面目な小角像になっていて、読んでびっくり、なるほどこういうイメージもあるのか、と現代人的想像力の発揮の情況がよくわかる。自ら作品中で示した史的資料と反対の人間像の発想をしたのであろう。謹厳実直な日本人像は江戸後期から明治のものであるが、意外な役小角像を書かれる時代の現代性を浮き彫りにしている。
発行所=〒001?0034札幌市北区北三十四条西11丁目4?11?209、札幌文学会

カテゴリー:札幌文学

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