2013年9月アーカイブ

「仙台文学」82号(仙台市)

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2013年9月14日 (土)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

 地域の「文学祭」などを行う宮城県芸術協会が公益法人化されたと編集後記にある。9月25日?20日には「象潟・酒田・鶴岡文学の旅」が行われるという。地域活動から離れて、遠くからの作品鑑賞は、妥当なのかどうか、疑問に感じることがある。余計な口出しであるが、なかには重要な研究資料もあるはずで、過去には、どの同人誌かは忘れたが、たまに研究者からの問い合わせもあったことがある。

【「天明の銀札始末?小人目付新兵衛見廻録」宇津志勇三】
 天明の飢饉で、食糧不足とインフレの惨状を描く歴史小説。仙台藩で22万人、4人に一人の餓死者が出たという。貴重な資料の存在と、それを活用した気力のこもった作品。日本的民族体質は、気候変動で幾度も飢饉に会いその体験を前提に、少カロリーで活動する体質に作られてきた。それが現代のように飽食時代になると、糖尿病になりやすい。これまでの民族的体質は失われてきているのではないか、と考えさせられる。

【「我が身を救う術は無く?仙台維新譜?」牛島富美二】
 これも歴史小説で、西洋渡来医師ヘボンに学んだ山田良琢の戊辰戦争の余波に巻き込まれ、富を得たことの世間の蔭口に見舞われ自死する悲劇を描く。過去の履歴には、当人しか知らない経緯があるはずだが、世間は表面的な見方で噂を囃す。それをなぜ、無視できなかったのか。現代でもあることで、考えさせられる史実である。

【「詩本論(二)詩の方向性と詩人の立場」酒谷博之】
 詩作の原点を真善美に置いた手法を理論的に解明している。

【「砦麻呂の末裔たち」高橋道子】
 日本の自然と伝統を原発事故で破壊された嘆きが伝わる。

【「石川啄木詩一編の謎?森に潜むもの」牛島富美二】
 啄木は「雲は天才である」という生前未発表の小説があり、そこに歌として登場する元の詩が、昭和十一年「情熱の詩人啄木」で映画化された時に助監督が加筆されて伝わっているのだという。そこから啄木が学校の裏山の森を想像力をもって愛したであろうことが記され、筆者の身近にある森の世界への愛着を語る。森には人間関係からではない、孤立感のない自律的な自由な孤独が得られるところがある。

紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一

カテゴリー:仙台文学

「群系」第32号(東京)

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2013年9月 8日 (日)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

 このところ心身ともに朦朧としてきて、読んでも書くことができない。過去に読んだことがあると思っていた「群系」であるが、もっと柔らかいイメージがあった。勘違いかも知れない。当方の歯が弱くなったのか、読んでも硬くて歯がたたない研究・評論が多い。ただ、読むと。ああそうか、教えられることが多い,。各評論が良く言えば多彩でにぎやか、悪く言えば誰もが気ままでばらばらに語る。自由なサロン文学の集いであろう。うらやましいような感じがしないでもない・
【「お嬢吉三にはなれない」土倉ヒロ子】
 亡くなった祖母と同年代の女性を専門にしたホストクラブを経営し、そのひとりの相手をする若者の行為と心情を描く。生と死と退廃と老生とーー。ボードレールの悪の華の世界か。ただ、退廃の美的強度がもうすこし欲しいような気がする。
【「映画『下町』プレスシート」野寄勉】
 この映画は見ていないが、パンフレットをまる写ししているところがあるので、まるで映画館にいるような気にさせられる。楽しく読んだ。原作者・林芙美子の小説の文章は、私はかなり研究的に呼んだ。ざっくりしとした生活的な書き方なのに、人間的底辺の詩情と文学性がある。「めし」と一緒に幾度も読んだ。いじましいことだが、当時は、自分だって下積みの苦労があるのだから、彼女の文章世界に迫りたいと思ったことがある。自分の人間的な限界が文章の限界になっていることさとらされた。私が他者の文章に向けて、冷やかなところがあると感じさせるものがあるとすれば、それは自分の限界に対する負け惜しみであろう。
【「国木田独歩―人間独歩・もうひとりの明治人」間島康子】
 独歩は、詩的な散文精神をもって小説に拡大しようとして未完成で世を去った。その生活的な成行きがわかる。私自身は、独歩散文の延長線上に日本文学の展望があると、いまだに考えている。箱根に行くと、湯河原の万葉公園に寄ったものだ。そこの文学館には芥川龍之介に小説材料を提供した文学青年のことや独歩の足跡があって好きな場所であった。本評論で、惜しむらくはタイトルが散漫である。書いてからタイトルを決めるとそういうことがある。ピタッと来るタイトルが出来るまで待って、あらためて推敲すると焦点が合うことが多い。
紹介者=「詩人回廊」 北 一郎

カテゴリー:群系

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