2010年11月アーカイブ

2010年11月14日 (日)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「輝く日々」堀井清】
 400字原稿用紙にして360枚という長編の一挙掲載である。70歳代の小田信吾は定年退職後、息子たちが自立すると、血のつながらないずっと若い柘植夫妻と自分の家で共同生活をしている。他人家族である。小田の妻はその前に家出し、自立して店で働いているが、小田には妻がなぜ家出したかわからない。
 クラシックの演奏会に行って、中津という年金生活者と知り合いになる。彼は妻が交通事故死したが、それは自殺であろうと信じている。
 碁会所を経営する男など、小田の行動で出会う人や出来事は、理屈では言い切れない、老いて生きる状況を雰囲気小説として、読むものに興味をかきたてるように、面白く伝えていく。
 黙読の声調というものがあるかのように、練られた文体。四重奏のように静かに、そしてそのスタイルに相応しいうねりと変調のスタイル。うねりをもって少しずつ世俗的な話があらわれ、時間の流れがなめらか河を船で行くように示され、現代的な課題が浮き彫りにされていく。見事で学ぶところの多い作品なので、当会の会員に貸したら、長編純文学なのにあっという間に読んでしまい、絶賛するほどの名品。
 発行所=〒477-0032愛知県東海市加木屋町泡池11?318、文芸中部の会。
(紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一)

カテゴリー:文芸中部

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