2010年10月アーカイブ

「風の森」第13号(東京)

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2010年10月31日 (日)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「夢遊の時代(青いトランク)」遠矢徹彦】
 この作者の作品を3作ほど読んでいるが、どれも文章力が強く、腕力で惹きつけて読ませる作風である。どこがどうといっていると、きりがないが、今回の作品は全共闘時代の革命騒動の精神が、青いトランクのなかからぞろぞろと出てきて、手品を見るように主人公の放浪の精神が遊びまわり、またトランクに収まるという仕掛けに読めた。エネルギーは前作ほどの勢いがないが、その分、形式的にいちばん纏まっているので、諧謔いうか肩の力を抜いてイロニーが利いて完成度が高いように思えた。

カテゴリー:風の森

2010年10月29日 (金)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

【「むらさきの煙 島の辰造」蘇我文政】
 身近に接するお線香の産地が、淡路島の江井というところにあることをこの作品を読んで知った。話は江井というところで、主人公の辰造は、上方の紺屋に奉公に行き、そこでの職人技を捨て、故郷の江井に戻り線香造りの元祖となって地域産業のもとになる。だが、現在はあまり知られず、地元の寺の小さな墓地があるということである。
 漁具や持ち船などの生産手段をもたないで、浜辺の海藻をとって暮らす磯乞食とよばれた人たちの家系から奉公に行った男が、村人のひややかな視線のなかで、線香づくりをはじめ、ついに成功者となる。その仕事の犠牲となった息子の病弱な様子と、家族の運命が身にしみて伝わってくる。
 身振りの大きな逞しい文体で、視座を大きく構えたもの。そこに人間味をもった語り口があり、大変魅力的である。風景の形容も随所に光るものがあり、潮の匂いが全編にただよう。史実をよく噛み砕いて挿入されているらしく、大変面白く読める。素朴さを装いながら、練達の語りといってよいであろう。とにかく勉強になったし、感銘を受けた。

カテゴリー:淡路島文学

【「星は薔薇色の涙を流さない」小島義徳】
上下2段に別れ上段は創作、下段には書き進む作者の状況が語られます。「劇中劇」のような、「作中作」と言うのでしょうか、意表を突いた構成です。上下段が響き合って、併せて私小説のように読みました。下段はブログで読んでいたのですが、こうやって抜粋されると上段との同時進行が奇妙な感覚を呼び起こします。小説を書くとき、そう、こうやってイメージを膨らませるな、自分の感覚をこうやって表現に結びつけるな、など生生しく感じました。共感しながらどんどん読み進み、やがて身につまされる思いでした。上段の緊張感と、「わたし」の繊細な感性が印象的です。

カテゴリー:文芸誌「出現」

「詩と真実」10月号(熊本市)

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2010年10月 9日 (土)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

月刊でよく作品が集まると感心する。「合評会記」という欄があって、感想があるのが面白い。20人以上が参加するようなので、活発なものだ。
 詩作品に【「不安な色―青と緑について」池崎輝夫】があって、色弱であることの個性を異邦人的な自意識で表現するのが、必然性をもったものとして印象に残った。
 【「かぶく清正」蓑田正義】
 戦国時代から権力者の監視の眼を意識ながら、人心をとらえる武将・加藤清正の行き方を落ち着いた筆致で描く。時代背景や考証が行き届いて、面白く読んだ。作品全体がきちんと整っていて、品格のある作風が印象に残った。編集後記によると、2004年に歴史物の短編集「まりやの旗」を上梓しているというので、書き慣れているのが納得できる。
 発行所=〒862?0963熊本市出仲間4?14?1、詩と真実社。

カテゴリー:詩と眞實

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