2010年7月アーカイブ

「胡壷・KOKO」9号(福岡市)

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「季刊遠近」kitaohiさんの評をHP「文芸同人誌案内」掲示板より転載いたします。

今回は「渓と釣りを巡る短編」(胡壷第9号、桑村勝士)から感想を書いてみることにする。

作者は、胡壷第7号に宮崎県臼杵郡椎葉村を流れる耳川源流のX谷を題材にして、「鍵」(キーとルビがある。)という題名で作品を載せている。この「渓と釣りを巡る短編」も同じ場所を題材にして書いている。

「峠越え」は「ぼく」(県庁農林水産部勤務)と小野さん(漁協関連の団体に勤務)は勤務先は異なるが、「ぼく」はその団体の監督する立場にあるらしいことがほのめかされており、ある事件の関連で、「ぼく」と小野さんが一緒に釣行するのは憚られるような立場らしい。

その小野さんと偶然耳川源流のS谷で一緒になってしまう。渓流での釣果あったものの雨が強くなり、遭難しそうになる。しかし、小野さんの判断でうまく帰ることがことができるようになった。

簡単に書いたが、内容は素晴らしく、釣りを全く知らない私がぐんぐん引き込まれてしまった。

「夫婦ヤマセミ」も耳川源流の渓谷に小野さんといった話である。大物を釣り上げようとして失敗したが、そこにヤマセミの話をからませて爽やかな作品に仕上げている。文章も凝っておらず、作者が書きたいことをしっかり書いていることが強く感じられた。作者のこの世界(渓流釣り)の奥行きの深さを感じさせてくれる作品である。

私はこの世界は全くわからないので、インターネットで日本渓流JP翠渓会のサイトで耳川源流を調べてみた。耳川源流の渓流を遡る動画も載っていた。本当に大雨に会ったら帰れないだろうと思う。

作者がこの舞台で、人間関係、或いは釣りと川魚を狙う動物などをつかって書こうとしたものに十分迫れなかったが、また日を改めてそのことに触れてみたいと思う。

今回は駆け足で読み、書いてしまったのでお許しを願いたい。

カテゴリー:胡壷・KOKO

2010年7月4日 (日)付、「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より転載いたします。

 10周年記念特集で、カラー写真入りの300頁にわたる豪華版である。相模原市は人口72万人、全国で19番目の政令指定都市になったそうである。写真家の江成常夫氏がパラオの海に今も沈む日本軍のゼロ戦闘機の残骸写真と一文を掲載している。
【「含笑些話異聞(三)老樟(くす)の香」中村浩巳】
 退職の高齢者夫妻の生活を、ユーモラスな筆使いで、しかもリアルで幻想的に描く。自在な表現を駆使して面白がらせる。逞しさを感じさせて、ほんとうに面白かった。

【「鱗子」白銀律子】
 ある恋愛の物語を、短く詩情をもって語るが、ほとんど全体が詩。感覚が澄んでいてシャープ。魅力的な作風をもつ詩人である。

【「私的な小説作法と意見」外狩雅巳】
 明解で力強い描写力のある文体を発揮し、伝達力を重視する意味では、現代的な作風をもつ作者。東京・中野の新日本文学会の学校、池袋・大塚の民主主義文学、三田の中央学働学院など、労働者文学で学んだ経過と創作に関する持論が述べられている。自分から見ると、外狩氏の作風は、文学的な表現には考慮に入れず、素朴で粗削りの良さを持つように読めた。この論で、その理由がわかる。
 また、体験から生まれる細部の面白さがあり、著作「この路地抜けられます」が書店で300部だか売れたというのも理解できる。小説の要素である「この人を見よ」と「この現場を見よ」という二つのコンセプトがあるので、週刊誌的な面白さも含むのである。
 自分も新日本文学会の中野には通った。その頃は詩を書いていたので、長谷川竜生、針生一郎、菅原克己などが講師にものを聴講したものだ。
 その他の作品も表現が明解な感じがして、雑誌として面白い。
(紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一)

カテゴリー:相模文芸

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