4月18日 (土)付「文芸同志会通信」http://bungei.cocolog-nifty.com/より、(1)を転載いたします。
【「桟敷を跨ぐ」渡辺勝彦】
戦後間もない、朝鮮戦争の終わりごろの話。もう時代小説のジャンルになるかも。戦争で成金になった人が芝居小屋を創設し、そこの役者や浪花節の演者と戦前・戦後の官憲の絡みを描く。戦時中に特高警察から俳句誌に発表した句が天皇や国体に背くと言いがかりをつけられ、拘留され転向を誓わせる。官憲の横暴さと、それをトラウマとして戦後までも復讐を考える人々など怨念と恋愛を描く。
当時の時代の雰囲気がよく出ているのと、芝居小屋の舞台の様子を実況中継のように描いているのが大変面白かった。同時に戦中・戦後のあの暗い世相のなかで、時代に流される官憲のいじましさを再認識させ、いまもその残滓が残っているように思わせるところなど、現代性を持っている。
2009年4月アーカイブ
【「誰もいない部屋」(前編・後編)河邑航】
タニグチ理容店の谷口氏は客との会話でも相手に立ち入らないようにしているし、妻とふたりで「同じコマを使い回すアニメのよう」な暮らしをしています。そこに警察官が訪れ、客の死を告げます。谷口氏は客の名前を聞いても記憶にない。警官は死んだ男性の持ち物の中に理容店の会員証があったことから訪ねたのです。そこから徐々に谷口氏の日常感覚がずれてゆきます。といっても男性の死に関係があるのでもなければ、特別に傍目に見てわかるようなずれ方をするのでもありません。それは谷口氏の内面で起こる、些細なことかもしれません。それでも、ずれの感覚が実感を持って伝わってきます。会員証の使い方や表現も、とても効果的です。大好きなレイモンド・カーヴァーの作品を読んでいるようでした。カーヴァーの新作はもう読むことはできませんが、この作品を読んで久しぶりに平凡と思っている日常の中に潜む揺れの感覚を味わいました。しかも舞台がアメリカではなく、どこの町にでもあるようなタニグチ理容店なのです。
2013年5月
カテゴリ
- AMAZON (3)
- Irino Sketch(イリノ スケッチ) (1)
- ignea イグネア (2)
- かいだん (1)
- すとろんぼり (2)
- てくる (1)
- ふくやま文学 (2)
- まくた (2)
- アピ (1)
- カオス (1)
- カプリチオ (2)
- カム (4)
- クレーン (3)
- コブタン (1)
- サロン・ド・マロリーナ (2)
- デジタル文学館 (1)
- メタセコイア (1)
- 中部ぺん (1)
- 九州文学 (4)
- 仙台文学 (5)
- 創 (3)
- 北狄 (1)
- 午前 (1)
- 南風 (2)
- 奏 (7)
- 婦人文芸 (5)
- 季刊・遠近 (8)
- 季刊午前 (1)
- 孤 (1)
- 孤帆 (4)
- 孤愁 (3)
- 安藝文学 (1)
- 小説π (2)
- 小説と詩と評論 (3)
- 小説藝術 (2)
- 屋上 (1)
- 層 (1)
- 山音文学 (1)
- 岩漿 (1)
- 弦 (1)
- 彩雲 (3)
- 文芸中部 (8)
- 文芸同人 長崎の会 (3)
- 文芸誌「出現」 (4)
- 文芸誌O (7)
- 文藝誌「なんじゃもんじゃ」 (6)
- 日曜作家 (1)
- 星座盤 (1)
- 時空 (1)
- 木曜日 (4)
- 札幌文学 (1)
- 楔 (2)
- 構想 (6)
- 樹林 (1)
- 橋 (1)
- 檣 マスト (1)
- 水晶群 (1)
- 氷魚 (1)
- 河 (1)
- 海 (4)
- 海峡 (1)
- 海峡派 (2)
- 海(第二期) (5)
- 淡路島文学 (5)
- 渤海 (1)
- 湧水 (1)
- 澪 (1)
- 照葉樹 (7)
- 照葉樹・二期 (4)
- 狐火 (1)
- 獣神 (2)
- 白鴉(HAKUA) (1)
- 相模文芸 (9)
- 石榴 (4)
- 砂 (1)
- 私人 (2)
- 科野作家 (2)
- 筑紫山脈 (2)
- 素粒 (1)
- 繋 (2)
- 群系 (2)
- 習志野ペン (1)
- 胡壷・KOKO (10)
- 蠍 (1)
- 視点 (4)
- 詩と眞實 (3)
- 農民文学 (2)
- 鉄道林 (1)
- 銀座線 (5)
- 雑木林 (3)
- 雪渓文學 (1)
- 風の森 (3)
- 風(岡谷市) (1)
- 鳥語 (1)
- 龍舌蘭 (1)
- KORN (2)
- R&W (7)
ご案内
最近の記事
月別 アーカイブ
- 2013年5月 (2)
- 2013年4月 (5)
- 2013年3月 (14)
- 2013年1月 (1)
- 2012年12月 (5)
- 2012年11月 (1)
- 2012年10月 (3)
- 2012年8月 (4)
- 2012年7月 (10)
- 2012年6月 (2)
- 2012年5月 (5)
- 2012年4月 (3)
- 2012年3月 (6)
- 2012年1月 (3)
- 2011年12月 (6)
- 2011年11月 (5)
- 2011年9月 (1)
- 2011年8月 (5)
- 2011年7月 (9)
- 2011年6月 (1)
- 2011年5月 (5)
- 2011年4月 (4)
- 2011年3月 (1)
- 2011年2月 (9)
- 2011年1月 (12)
- 2010年12月 (3)
- 2010年11月 (1)
- 2010年10月 (4)
- 2010年9月 (4)
- 2010年8月 (1)
- 2010年7月 (2)
- 2010年6月 (2)
- 2010年5月 (4)
- 2010年4月 (2)
- 2010年3月 (7)
- 2010年2月 (16)
- 2010年1月 (11)
- 2009年12月 (4)
- 2009年11月 (1)
- 2009年10月 (4)
- 2009年9月 (9)
- 2009年8月 (3)
- 2009年7月 (3)
- 2009年6月 (9)
- 2009年5月 (3)
- 2009年4月 (2)
- 2009年3月 (7)
- 2009年2月 (4)
- 2009年1月 (7)
- 2008年12月 (13)
最近のコメント